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不知火検校 九月大歌舞伎(新橋演舞場)

悪徳の栄え…下衆の極みとも言うべきダークヒーロー『不知火検校』

新橋演舞場で九月大歌舞伎の夜の部を観てきた。三津五郎の『馬盗人』が観たくて観に行ったわけであまり期待していなかったのだが…

 

面白すぎた。すげー面白い。良くも悪くも退屈な間(笑)がある歌舞伎において、退屈させる暇がない!それほどエグイ話が続く。

ともかくエグイ話だ。ここまで嫌らしい主人公も珍しい

『悪の華』と言う事で、昼も夜も幸四郎が悪役をやるわけだが、昼の『河内山』は悪と言いつつも任侠よりの悪なので、観ていて嫌な気分にはならないのだが、この『不知火検校』という男は下衆の極みとも言うべき存在で、共感出来る部分は全くない。

盲目である『按摩富の市』は、盲目である事を逆手に取り、弱者を装い人を騙す。その『悪』は徐々にエスカレートしていき、ついに自分の師匠でありお世話をしてくれた『不知火検校』夫婦を殺し、自分が『二代目・不知火検校』となる。

『検校』という役職は大名にも匹敵する立場なのだが、それでも満足しない『二代目・不知火検校』は最終的に大きな犯罪を企む…

 

『按摩富の市』は、生まれついての『悪』なんだよね。

それというのも、『按摩富の市』の父親が弾みで按摩を殺してしまい、その時に丁度生まれたのが『按摩富の市』

殺した盲目の按摩の呪いなのか、富の市は生まれついての盲目だった。そして悪徳を行った時に生まれたためか、富の市は生まれついてのだった。

按摩の修行をしていた子供時代から手癖が悪く、客の物を仕事中に盗む。一度は反省したふりをし、再び不知火検校の弟子となるのだが、彼の悪は止まる所を知らない。

彼は息をするがの如く人を殺す。殺し事をなんとも思わない。全ては金の為

師を殺し、自らが検校となった後も、その地位で仕入れた情報を元に、手下達に盗みを働かせる。

気に入った女も策略で手に入れ、その女が浮気をしていることを知りつつも、手の内で泳がせて遊ぶ。逆にその浮気相手に仕事をやり、妻がその仕事にかこつけて会いに行き、逢瀬を楽しむ事を逆に楽しむ。そして最終的に…なんて歪んでるんだこの人!歪みきってる!!

最後の最後、花道で語る検校の台詞がかっこいい。それが全て彼の美学。盲目の彼にしか見えないもの…なんだよねえ。その台詞を聞いた、普通の人々はあっけに取られ、何も言えなくなってしまう。でも、そうなんだよねえ…

なんというかね、『デスノート』的な良さがあるんだよね。不適な笑いとか…幸四郎、はまり役かもしれないなー。

 

36年振りの再演で、なおかつ2日目だったからか間がへんだったり色々と粗が目立った部分はあったけど、それでも十分面白かった。幸四郎はこれを続けてほしいなあ。当たり役だと思うんだよなー。

「おや?調子が悪そうですね。針をうってあげましょう」って検校に針なんて打たせたらだめー!もー仕事人みたいにぷすぷす殺すからっ!(笑)

回数を重ねると、志村、うしろうしろ!みたいなノリになってくるよ、客が。殺しのシーンなのに笑いが起こるって(笑)

 

新橋だから地味かと思ってる人、面白かったから是非観てほしいなー。まー正直、検校は胸くそ悪い奴なので、そうゆう人が嫌いな人には向いてないけど(笑)

しかしあれだな。息子染五郎がやった四谷怪談の伊右衛門といい、悪いやつが似合う親子だな(笑)

面白さを伝えたかったので、後日また感想をもう一個か来ました(笑)ネタバレこみはこちら

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沖津浪闇不知火
不知火検校(しらぬいけんぎょう)
松本幸四郎悪の華相勤め申し候

浜町河岸より横山町の往来まで
   
按摩富の市後に二代目検校 幸四郎
奥方浪江 魁 春
指物師房五郎 翫 雀
生首の次郎後に手引の幸吉 橋之助
湯島おはん 孝太郎
丹治弟玉太郎 亀 鶴
若旦那豊次郎 巳之助
娘おしづ 壱太郎
富之助 玉太郎
魚売富五郎 錦 吾
初代検校 桂 三
因果者師勘次 由次郎
夜鷹宿おつま 高麗蔵
鳥羽屋丹治 彌十郎
岩瀬藤十郎 友右衛門
母おもと 秀太郎
寺社奉行石坂喜内 左團次

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