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国立能楽堂で開催された「第55回 式能」を観てきた[能楽・感想]

古来の能楽の流れ、五流五番を楽しめる能の総合フェスティバル

国立能楽堂で開催された、第55回式能を鑑賞してきた。今年で3回目かな?

式能は古来の能楽の流れ神・男・女・狂・鬼の順番に公演をする会で、能の五流派(観世、宝生、金剛、喜多、金春)と狂言二派(大藏、和泉)をいっぺんに観られる会。

言ってしまえば、能楽のフジロック、サマソニみたいなもの(笑)

1部と2部で分かれているんだけど、どうせ観るなら通しでみないとね。まあ、能を5番も観るとすげー疲れるんだけどさあ(笑)

能楽のオープニングアクト(笑)能であって能でないと言われる、まあお祝いの舞だね。三番三も含まれて、五穀豊穣を願うみたいなもの。

西王母

古代中国の周の穆王(ぼくおう)の時代。一人の女が現れてお祝いに三千年に一度咲く花を献上する。女は西王母の化身であると身分を明かし、後で今度は実を持ってくるよと姿を消す。

今度はド派手な冠をつけて再登場。王に桃を献上して一舞してまた姿を消す。

中国ものだけあって衣装が派手。

大黒連歌

近江の国坂本の男が、友人を連れ立って毎年比叡山三面の大黒天に参詣して年越しをする。

2人は大黒天を讃える連歌をすると、そこに神々しい気配が。なんと大黒天が現れた!

大黒天は2人に自分の由来を語り、舞う。

2人の連歌を気に入り、気を良くした大黒天は、宝の入った袋と打ち出の小槌を授けて去っていく。

笑いの無い、なんともめでたい狂言で、大黒天の舞がダイナミックなんだよねえ。飛び跳ね飛び跳ね。

山本東次郎っていい年だと思うのだが、すごいよなあ。あんな跳ね回るってのは。

花月

行方不明になった子供と再会する僧侶の話。

正直あまり動きが無いので、ご飯を食べた後に観るのは辛い……

舟渡聟

琵琶湖対岸の嫁をもらう事になった夫が、妻の実家にお祝いの品をもって行く事に。

琵琶湖を渡る為に舟に乗ったのだが、その船頭が無類の酒好きで、婿の持つお祝いの酒に目をつける。

どうしても酒が飲みたい、船頭は舟を揺らしたり、流したりして婿を脅し、酒をせびる。

まんまと酒にありついて、婿を対岸に届けた船頭。

家に帰ってみると、なんと先ほど乗せた婿が!実は、船頭の娘を妻にしたのが、さっき乗せた婿だった!

ばつの悪い船頭は婿との対面を渋るのだが、会わない訳にもいかず……

前にも一回観てるんだけど、やっぱり面白い演目だよこれ。大体酒で失敗する奴が多すぎるんだよねえ、狂言(笑)

吉野静

源義経は頼朝の不仲で吉野山にこもっていたが、吉野山の僧兵が裏切り逃げ延びなければならなかった。

切迫した状況の仲、側近の佐藤忠信と静御前は計略を巡らす。

佐藤忠信は変装し、僧兵達に義経と頼朝は仲直りしたと嘘の噂を流し、静御前は僧兵の前で舞い、時間を稼ぐ。

やっぱりちょっと地味なんだよなあ、これも。謡の無い笛だけの舞ってやっぱり催眠効果があるというか(笑)

因幡堂

大酒飲みで家の事を何もしない妻に嫌気をさした旦那が、妻が実家に帰ってる間に離縁状を出す。

新しい妻を持とうと思った旦那は因幡堂の薬師如来に願をかけ、堂にこもる。

鬼の形相で戻って来た妻は、因幡堂でこもっている旦那を発見。

枕元で「西門の角に立った女を妻にせよ」という嘘のお告げをする。

お告げを聞いた旦那は西門に行ってみる。するとそこには例のお告げの女がいて……

なんというか、案の定と言うか案の定な話(笑)現代にも通じるよなあ。でもこれって旦那悪くないよね?(笑)

式能 因幡堂

鬼界島

歌舞伎等で有名な俊寛。能でも名前は俊寛なのだが、喜多流だけは鬼界島と呼ぶそう。

平家の全盛期に平家に謀反を起こした俊寛、康頼、成経。

中宮(清盛の娘)の安産祈願の為に謀反の罪の赦免が行われるのだが、その赦免状には俊寛の名前だけが載っていなかった。

舟は康頼、成経を乗せ島から離れていく。一人島に取り残された俊寛は、絶望しながらその舟が離れていくのをいつまでも見送る。

俊寛はお面。かぶり物をしているので顔面蒼白の老人の様に見えるんだよね。演者が小柄な方で小刻みに震えているので、かつて無いほどな哀れさなんだよなあ。

あんなおじいちゃん置いてくなんて可哀想だよっ!って感じで……

今まで観た俊寛の中で一番リアルにもののあわれ(笑)

式能 鬼界島

成上がり

主人の鞍馬参りにつき合った太郎冠者は太刀持ちなのだが、寝ている間に太刀をすっぱ(泥棒)に竹の棒と入れ替えられてしまう。

それをごまかすために主人に色々な例えを出しながら、太刀が竹の棒にレベルアップしたのだと言う。

そんなはずあるかっ!と主人に突っ込まれて泥棒を探す事に。

泥棒をみつけ捕らえるも、すったもんだの末逃げられてしまう。

太郎冠者らしい演目。太郎冠者は結構動く演目。本当、野村萬は若いなあ。

葵上

光源氏の正妻、葵上は物の怪がついて、病床に臥せっている。巫女に占ってもらうと、物の怪の正体は光源氏に捨てられた、六条御息所。

物の怪を祓う為に比叡山の小聖(僧侶)を呼び、祓ってもらうのだが……

一度戻った六条御息所が鬼の面で戻ってきてからの小聖との激闘が見物。

やはり通しでみると疲れる

朝10時から19時までぶっ続けで能、狂言を観るのはとても疲れるんだけど、やっぱり古来からの流れで観るのは能楽の醍醐味でもある。
今年はややメリハリが無くて辛い所はあったけど(笑)

でもやっぱり能は、仕舞とかではなく、演目全部観ないと良さが分からないものもあるんだよねえ。

第55回 式能

● 第1部
能 観世流 『翁』 観世清和
『三番三』 山本泰太郎
『西王母』 観世芳伸
狂言 大蔵流 『大黒連歌』 山本東次郎
能 宝生流 『花月』 金森秀祥
狂言 和泉流 『舟渡聟』 三宅右近
● 第2部
能 金剛流 『吉野静』 廣田幸稔
狂言 大蔵流 『因幡堂』 善竹忠重
能 喜多流 『鬼界島』 塩津哲生
狂言 和泉流 『成上り』 野村 萬
能 金春流 『葵上』 櫻間右陣

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