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世田谷パブリックシアターで三味線音楽を聴く「三茶三味」

杉本博司が舞台演出をし、鶴澤清治が三味線を弾く

三茶三味〜三味線音楽を聴く〜

世田谷パブリックシアターで開催された「三茶三味〜三味線音楽を聴く〜」に行ってきた。
3部構成で第1部はゲスト達の対談。

金曜はいとうせいこうと舞踊家の山村友五郎との話。これが面白かった。
義太夫を習っているといういとうせいこうの話は、持ち前のヒップホップなどの西洋音楽知識と相まって、非常に勉強になった。

「ドツボにはまる」というのは、元々太棹の用語だそうで、音が楽譜通りに進む、なんとも田舎臭い手習いの様な音だそうで。

リズムや音程を微妙にいい感じにズラすのが粋な音というもので、それを意図的にやることが、音の面白みになるというのがね。

義太夫と三味線との関係もそうで、ただ単にリズムにのっているだけの音楽は野暮ったくなるという。独特のグルーヴ感や、情念というのは、ズレの中から生まれるというのがね。

確かに、楽譜通りに進む音楽というのはプラクティスな要素が強くて、わざわざライブで聴く様なものでもない感じはするよね。

山村友五郎が語る、踊りの解釈の話も面白かった。

音楽を聴いて音楽に合わせるか、歌を聴いて歌詞の世界観を表すか。ただ、一方だけの解釈で続けるのではなく、踊っている最中にその場面場面で音をとるか、歌詞をとるかが変わるというのもね。

そうゆうことが分かって踊りを見ると、また踊りの見方が変わりそうで面白さが増すかもしれない。

また2人の会話の中で、西洋の演劇とは違って日本の演芸などは、一人が様々な役を語ったり演じたりするのも特徴的だそうで。

確かに文楽も、落語も、歌舞伎も日本舞踊も、男も女も老若男女、一人で演じたりすることもあるもんね。その多面的な捉え方が、表現にもあらわれるという話も興味深い。

いとうせいこうの義太夫の考え方も面白くて、子音よりも母音を押し出すことによって感情表現が強くなり、独特なグルーヴ感をかもしだすという。

ヒップホップをやっている、いとうせいこうにとっては、義太夫は日本のブルースだそうだ。

そして大阪に行くことを「ミシシッピーに行く」と言うそうで(笑)今度から使わせてもらおう(笑)

ともかく二人の対談は本当に面白かった。二人ともそれぞれ本業の知識だけでなく、色々なことへの造詣が深いので、変な専門家が
語るよりも分かりやすい。

その他にもお座敷での踊りはその狭さ故での最小限の表現とか、芸者が白塗りで派手派手なかんざしを付けたりするのは、座敷の暗さ故とか……興味深い話題は尽きない。

もっと色々な話を聞きたかったなあ。

第2部は義太夫節 鶴澤清治構成「三味線組曲」。

曲は「三番叟」「狐火」「オクリ」 「雪」 「茶筅酒」「沼津」「木登り」「柳」「野崎村」。

杉本博司の屏風「月下紅梅図」の前での3人の演奏。

暗い舞台の上で、背後の屏風が薄っすらと光を放ちながら、独特の雰囲気を醸し出している。

それにしてもやはり「三番叟」と「野崎村」は分かりやすくて面白い。

そして最後の第3部は義太夫節「卅三間堂棟由来」。

「四季柳図屏風」の前での、太夫と三味線の演奏。やはり暗い舞台の上での語りは、幽玄な雰囲気が出ていて、ぐっと引き込まれる。

「卅三間堂棟由来」は一度文楽で見ていたので、目を閉じていると場面場面を思い浮かべられる。

前の対談の話を聞いたのもあってか、ちょっと聞き方が変わったかも?

いやー、勉強にもなったし楽しかった。

『三茶三味(さんちゃしゃみ)~三味線音楽を聴く~』 | 提携 | 世田谷パブリックシアター

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