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ツンデレヒロインと仁左衛門のお人好し侍、そして染五郎の新作・空海。昼の部よりも分かりやすいくて面白い 四月大歌舞伎 [歌舞伎・感想]

4月第歌舞伎

昼とは打って変わって分かりやすい面白さ。新作空海は歌舞伎っぽくはない?

今月は昼・夜と続きて観てきた。夜の部は間30分の休憩しかないのがきつかった。仁左衛門の話が1時間30分、染五郎の空海が2時間30分くらいなんだもん。

しかし昼夜続けてみると、幸四郎染五郎と共演が多いし、両方共主演は頭が坊主(笑)

仁左衛門の彦山権現誓助剱は正統派な仇討ちものなんだけど、主人公とヒロインが魅力的。この話は好きだなー。敵討ちというテンプレでありながら、キャラクターが魅力的なんだよねえ。

染五郎の幻想神空海は空海が唐に訪れ、密教をおさめるまでの話。といっても硬い話ではなくて妖怪退治の話なんだよね、なんせ原作が夢枕獏だし。

どちらもストーリーが魅力的で面白かった。歌舞伎初心者の人でも見やすいかも?ただ、空海の方は歌舞伎らしさという点では全然ない感じなので、これが歌舞伎!と思われるとちょっと違う気もするけどねえ(笑)

彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)

杉坂墓所 毛谷村

仁左衛門が演じる、剣豪なのにお人好しすぎる侍、六助が巻き込まれる仇討ち話。この六助、キャラクターが魅力的なんだよねえ。

4月大歌舞伎

自分を打ち負かすものが出るまで仕官はしないと心に決めている六助は、亡くなった母の墓守をしている。

そこに歌六の演じる微塵弾正が年老いた母親を連れてやってくる。微塵弾正は仕官をしたいのだが、その条件が剣豪である六助を試合で負かすこと。

年老いた母に楽をさせたいという微塵弾正の心意気に感じいった六助は、試合でわざと負けることを承諾する。

微塵弾正が去った後、子供を連れた一人の老人が現れる。その老人を囲む山賊たち。

六助は山賊を追い払うことができたのだが、老人は傷を負ってしまう。

老人に頼まれ、子供を預かることとなった六助。それを知り、安堵した老人は息をひきとる。

その後場面は変わり、六助の家。

家の前で、約束の仕官をかけた試合。

そして、約束通り負けてやる助六。頭を最後に打たれて傷を負っても、晴れ晴れとした気持ちで試合場を去る六助。なんて、お人好し。

その後、六助の家に一人の老婆・お幸が現れる。その老婆は急に六助と親子になってやろうと言い出す!?

押しかけ母親(笑)にオロオロしているところへ、今度は一人の虚無僧が現れる。

家の様子を伺う虚無僧を怪しく思った村人たちは虚無僧に襲いかかるが、返り討ち。

その姿を見た六助は、虚無僧が偽物だということを看破するのだが、今度は「家来の仇」と六助に襲いかかってくる!

魅力的なツンデレヒロイン、怪力で武芸の達人「お園」

4月大歌舞伎

その偽虚無僧はなんと女だった。鬼の形相で襲いかかる女武者と対峙する六助の間に、助けた子供が「おば様」と入り込む。

子供を助けた経緯を女に話すと、急にしおらしくなり、「私はあなたの女房です!」とデレ出す(笑)

1日にして、子供と母親と女房ができるって(笑)なんて日だっ!(笑)

名はお園といい、六助の師匠・一味斎の娘。六助の人柄を気に入っていた師匠は、娘を許嫁にしたのだ。

デレだしたお園は、急にかいがいしくなり、照れて木臼を持ち上げる(笑)設定では180cmの怪力無双の女武芸者らしいからねえ(笑)

師匠の安否を尋ねると悲しみだしたお園。そこへ部屋にいたお幸が出てくる。なんとお幸は一味斎の妻。

一味斎は京極内匠という男に狙撃されて亡くなったという。

そこに村人たちが一人の亡骸を持ち込んでくる。それは村人のひとりの母親だという。

その亡骸を見て、六助は驚愕する。なんと、微塵弾正が連れた母親だった。

微塵弾正は仕官したいがために、この母親を騙し、六助をも騙したのだ。そして、用のなくなった老婆を殺したのだった。なんという外道!まあ、昼の不知火検校のが外道だけど(笑)

怒りに打ち震える六助の話を聞いていた、お幸は微塵弾正の人となりを尋ねる。その容姿は一味斎を騙し討ちした京極内匠と同じもの!

つまり、微塵弾正イコール京極内匠!二重の仇となるわけだ!

敵討ちを決意した、六助は衣装を整え敵討ちの準備をするのだった。

うーん、正統派でありながらキャラクターが面白くていいなー。主人公六助、ヒロインお園、そして悪知恵の働く微塵弾正となかなか曲者ぞろい。

しかしあれだねえ、お園のキャラクターを見ると、江戸時代からツンデレってテンプレなのね(笑)

高野山開創一二〇〇年記念 幻想神空海(げんそうしんくうかい)

沙門空海唐の国にて鬼と宴す

原作は夢枕獏。うーん、夢枕獏らしい(笑)

どーも話の展開と主人公・空海、そしてパートナーの橘逸勢との関係が、陰陽師なんだよねえ。

染五郎の曲者っぽい演技も、空海、安倍晴明と同じ感じ。そしてオチも……

ただまあだからといって面白くないわけでなく、序盤がちょっと退屈で、大丈夫か?と思ったけど、尻上がりに面白くなってきて、終盤すごく盛り上がるっ!

大円団ー!って感じで良くできた話だったよ。ただまあ、歌舞伎?と言われると「どうだろう?」って感じはするけど(笑)

なんというか、舞台転換は自然な感じで、基本黒子とか出てこないんだよね。で、見得を切る場面も全然ないもんだから、歌舞伎役者が演劇を演じてる感じでもある。

ワンピースの方が歌舞伎してた。まあ、この辺の定義って難しいよねえ。

歌舞伎を見たいっ!っていう初心者には進めにくい感じでもあるなあー。難しいね、こうゆうの。

新作なのであらすじは控えめにしときます(笑)

あらすじ

密教をおさめるために唐に訪れた空海は、何としても密教の青龍寺に入り込みたい。

そこで、妖怪退治と関わりのある密教に割り込むため、都を騒がす化け猫退治に乗り出す空海。

劉雲樵の館に化け猫が出没すると知った空海は、化け猫に会いに行く。そこで化け猫と出会った空海は、その裏に大きな企みがあることに気がつくのだった。

四月大歌舞伎

平成28年4月2日(土)~26日(火)

夜の部

彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)

杉坂墓所 毛谷村

毛谷村六助 仁左衛門

お園 孝太郎

微塵弾正実は京極内匠 歌六

幻想神空海(げんそうしんくうかい)

沙門空海唐の国にて鬼と宴す

空海 染五郎

橘逸勢 松也

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