3人だけの閉鎖劇。閉じ込められた家族はだんだんとおかしくなっていって……
東京芸術劇場で公開中の表に出ろいっ!英語版One Green Bottleを観てきた。
公式サイト: 「表に出ろいっ!・One Green Bottle」
表に出ろいっ!は2010年に公演された、中村勘三郎、野田秀樹、黒木華の3人劇。
犬の出産を控えた家族が、それぞれの理由で家を空けたい。だけど、犬の出産があるから誰かが留守番をしなければならない。
それぞれが勝手な理由で出ようとする中、それぞれは騙し合い、それぞれの足を鎖で柱に繋いでしまう。
著名な能楽師の父が家を完全防音にしてしまったために、叫んでも外には聞こえない。
自宅でありながら、軟禁状態になってしまった3人は、最初は啀み合いつつもなんとか脱出しようとするのだが……というのがストーリー。
2010年に観た時は初日か二日目だったため、なんかもーグダグダで、それぞれがセリフを言いあいながら自分で笑ってしまうこともある感じだった。
それでもやはり最後の方は緊迫感のある演技で、どうなるんだろう?という不安感がよく出ていたのを覚えている。
今回はさすがにその辺はブラッシュアップしていて、ハイスピードでありながら、テンポよく話が進んでいった感じ。
今回は娘のインパクトが強い。
前回は、父の能楽師が勘三郎、母が野田秀樹、娘が黒木華だったのだが、今回は小柄な女性のキャサリン・ハンターが父親、母親が野田秀樹、娘が男のグリン・プリチャード。
日本語版は、勘三郎、野田秀樹が前に出まくっていたので、娘は印象がない感じになってしまったんだけど、今回、娘はピンクのロングなカツラというド派手さと、3人の中では一番体格が良く舞台を走り回っていたので、一番インパクトがあった。
父のキャサリンは顔がぐちゃぐちゃに動く人で、小柄でありながら尊大な態度の父親役がとてもよくはまっていたのだが、能の動きをするときにちょっとした違和感が。
能の舞いを踊るときに、どうしてもしなりが入るんだよねえ。
能は体の芯を動かさないで回るのが美しいのだが、どうしても回るときに体にしなりができる。そして、指先とかがどうも日本舞踊的な動きなんだよなあ。
それがちょっと気になっちゃって。何せ父親は能の大家ってやくどころだからね。
外国人にはそう言った動きが難しいのかなあ。やっぱりその辺は勘三郎には勝てないよね。
母親は相変わらず(笑)野田秀樹はヒステリックなおばさんの役とかはハマるよねえ(笑)
豪華キャストのイヤホンガイドだけど……
同時通訳のイヤホンガイドがとても、豪華キャスト。父が大竹しのぶ、娘が阿部サダヲ、母が野田秀樹。
なんだけど、音声があまり良くないので、声が聞き分けづらいのと、演技の邪魔にならないように、平坦にセリフを読んでいるものだから、せっかくの豪華キャストの特徴が全くないというもったいなさ(笑)
同時通訳イヤホンガイドってのを初めて使ってみたけど、なかなか難しいね。日本語聞いちゃうと、せっかく感情を込めて演技をしているのを見逃しちゃったりして。
慣れるまでに時間がかかっちゃった。
やっぱり野田秀樹の閉鎖劇は面白いな
野田地図は、ここのところ大人数での演劇が多かったけど、やっぱり小規模で1つのシチュエーションだけの閉鎖劇も面白いな。
規模が大きくなると、どーも本筋から外れて政治的なメッセージ色が強くなったりする時があるからなあ。
なんかどうでもいいことがきっかけで、どんどん人間のエゴがむき出しになっていく様がテンポよく繰り広げられるのが気持ちいいんだよね、野田秀樹の演劇って(笑)