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「冥途の飛脚」、駄目男とそうゆうのが好きな駄目女の夢想話。[文楽]

過去に見た歌舞伎、文楽、能楽などの粗筋をご紹介。今回は近松の傑作の一つ「冥途の飛脚」。

今回の話は「冥途の飛脚」。歌舞伎だと「戀飛脚大和往來」。先に歌舞伎の方を観てからの観賞。作者は近松門左衛門。 
話の内容をざっくり要約しちゃうと、会社の金を使い込んでホステスに入れこんだ男が逃げてくという話(笑) 

飛脚は佐川急便のイメージで荷物運びのイメージだけど、実際は「為替」と言われる証券を取り扱う仕事も兼務してる。江戸、大阪のお金のやり取り等を代わりにやる業務で民間だけではなくて、公費も扱ったりするそうで。 

文楽の「冥土の飛脚」と「戀飛脚大和往來」、筋は一緒で主人公の忠兵衛が公金を横領し、芸者の梅川と心中するという大きな流れは一緒なんだけど、登場人物の性格が結構違う。 

まず主人公の忠兵衛が駄目人間。ほんと駄目(笑)友達から金を借りても返さない、仕事の金を使って、芸者遊びにハマる…その上プライドが高くて見栄っ張り。歌舞伎では同じ様な性格なのだが、どちらかというと小心者な印象。まー多分、上方の色男の典型で、色白でぺちゃぺちゃしゃべり、なよなよしている役作りからの印象なんだけど。 

結果、忠兵衛を追い込んでしまう八右衛門。八右衛門はほんと180度性格が違う。歌舞伎の八右衛門は、梅川に横恋慕し、忠兵衛を罵って落とし入れる悪友だけど、文楽の八右衛門は、友人、忠兵衛思いの口の悪い好漢。 

忠兵衛が公金の封印を切ってしまう段、「封印切」の段でその違いが如実に出てくる。 
歌舞伎の八右衛門は、酔って梅川が居る郭にやって着て、そこに居る女郎達に散々悪口を言いまくる。それを2階で梅川とイチャイチャしていた忠兵衛が聞いて居ても立っても居られなくなり、表に出てきて梅川を身請けする金はあると言い放つ。その金は屋敷に届ける為の公金の300両。その金を見ても罵りまくる八右衛門。ついにキレた忠兵衛が封印を切って大盤振る舞い。身請けされる事を知って喜ぶ梅川。梅川と忠兵衛が身請けの手続きをしに出ていった後、八右衛門は、落ちている御用金と書かれた封印の切れ端を見て、忠兵衛が公金横領した事に気づく…ってな顛末。 

文楽の八右衛門もやっぱり郭にくるんだけど、これから忠兵衛が来るかもしれないが、彼は店の金にも手を出す始末で、このままでは身を滅ぼしかねないから、追い返してくれと頼む。梅川もそこに居て、田舎者から身請けの話が着ているはずだから、忠兵衛の為にもそっちに行ってくれと言う。だけど、梅川は、下賎の身に落ちても忠兵衛と一緒に居たいとドリーミングな発言。それを戸口で聞いていた忠兵衛が興奮して乱入し、八右衛門に大見得を切って金をばらまく…金は養子に入った時の支度金だから大丈夫だ!と言い放つ忠兵衛。それを聞いた八右衛門は、素直にののしった事を謝って、他の女郎達と出て行く。 

梅川も歌舞伎ではおとなしいだけの女性だけど、文楽だと気が強いし、かなり忠兵衛との恋愛に酔っている感じが出ててなんか痛い(笑) 

結局、その金が公金だった事を梅川に話して、二人は逃げていく訳だが、そんな成り行きだから、最後の道行きでめそめそベタベタしているのが、なんだかなーって感じなんだよねえ。悲劇に酔ってる二人。割と似た者同士なのかもねって感じ。 

悲劇というか自業自得じゃん!もー、「闇金 ウシジマくん」に追い込まれちゃいなさいよ!「カイジ」の様に地下帝国に落とされろよっとか思ってしまった(笑) 

歌舞伎は八右衛門を悪役にする事で悲劇性をアップしてるんだろうねえ。こうなってしまったのは仕方の無い事でという意味で。 

正直、しょーもない奴だとか思ってしまうもんね、文楽だと。でも、個人的には近松の原作、文楽の話の方が好きだ。人間のエゴや性が露骨に出てる感じがして。冥土の飛脚

 

そんな訳で「冥土の飛脚」では、強面の好漢、「八右衛門」が好きになったし、忠兵衛が封印切の郭に向かう前に、公金を持って梅川に会いにいくかどうか迷ってる時に、出会って吠えられる「やる気のない造形の犬」が好きだ(笑)

 

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