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『舟を編む』三浦しをん

書店に並んでいる時からなぜか気になってしまった本。電子書籍で欲しくて待っていたのだが、結局我慢できずに買ってしまった。やっぱり映画化するってことで、予告とか観ちゃうとねえ。読みたくなっちゃうよ。

買った翌日に電車で読もうと思い、鞄に入れつつも読めず、翌日春の爆弾低気圧で外出も出来ないからって事で、仕事合間に読み始めたら止まらずに、その日に読んでしまった。

いやー、面白かった。最後の方に本を読みながらちょっと涙ぐんでしまった。三浦しをんの作品は初めて読んだけど、読みやすくてすいすい読めるのがいい。文体も俺に合っている。

面白い、面白くないという以前に、文体が合ってる合ってないってのも、本を読み進めるので意外に重要だよね。合わない作者は、面白いなーと思いつつもなんだか読むのが苦痛になってくる。先を知りたいのに読み進められない。面倒だからネタバレサイトとか見ちゃったりする場合ある(笑)

「辞書を編集する」ってなんか気になるよねえ。あんなものどうやるんだ?とか思ってしまう。DTPとかの仕事をしてたりもするので、その辺の苦労とかすっごく分かるので読むと「あー分かるわー」ってなってしまう。俺の様に洋服のカタログとかのレイアウトで悩む事よりも、字の羅列をどう収めるか?ってもーなんか無理(笑) 元々性格的に校正とか向いてない性格なので、その大変さたるや、俺は恐怖すらするよ、ほんと。

扱っている内容が地味なので、話の筋自体に派手さは無い。主人公である馬締自体も変人で、あまり派手な動きをしないオタクタイプなので、ものすごーく淡々としている。

淡々としているのだが、ふつふつとした熱さがある。コツコツと地味な事をずっと続ける情熱。色々な困難があるんだけど、それを飄々と乗り越えて行く精神的なタフさ。そうゆうのがぐっとくる。

ある意味、変な能力に特化した人物達の対比として割と普通な営業の西岡と後半配属される岸辺が出てくる。最初はその変人達に、ある意味コンプレックスを持ってしまうのだが、辞書『大渡海』を完成させたい!という、職人的な気質に当てられて、自分達もその熱を帯びてくる。ある能力だけが特化した人間の周りには、他の劣化した部分を補える普通の人が居ないとそのプロジェクト自体は成功しない。天才の発想を、実務化、普遍化する普通の感覚を持った人。 そのチーム感がなんかいい。地味だけど(笑) それを足掛け10年以上もするってすごいよねえ。

内容的には2部構成で、2部目は10年くらい経った後の話なのだが、さらっとしすぎてて2部目が始まった事に気がつかなかった(笑)徐々に変化があった描写が出てきて「あー、あれから数年経ってるのね」と分かってくるのだが、それだけ変わらない事を淡々とずーっと続けてきたのだ、と感じさせてくれた。考えてみたら、自分でも全く変わっていない感覚で10年経っちゃう事ってあるよねえ。 俺もここ数年、大きな変化が無いから「あー、もうこんなに時間が経ったのか」とか思ってしまう事がある。それを狙ってこうゆう風に書いたのなら、三浦しをんってすごい。

最後まで読むと、『舟を編む』のブックカバーが辞書『大渡海』を模したものだという事が分かる。こうゆうのっていいなー。電子書籍で買わなくてよかったと思った。出来上がった『大渡海』を手にした気分になれてちょっと高揚した。

ただちょっと気になったのは、ブックカバーを外した表装。少女漫画的なイラストがたくさん描いてあるのがなあ。ライトノベルっぽいとアマゾンの書評に書いてったのってこうゆう事なのね。確かにおっさんの俺が電車の中で読むには、ちょっと恥ずかしい表紙(笑)

映画の割引券がしおりとして挟まっていたので、映画も観に行こうかなー?映画のキャストはなんとなくイメージに合ってるというか、キャストを先に見てしまったので、俺はそのイメージで読んでしまったというところもあったりで。 内容的にそんなに改変されていないのなら、俺は絶対最後に泣くよ(笑)

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