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杉本文楽『曾根崎心中』(世田谷パブリックシアター)[文楽・感想]

まさに幽玄の世界、必要最低限のセットで表現される『曾根崎心中』

杉本文楽「曾根崎心中」

2012年、横浜のKAAT神奈川芸術劇場での初演も観ているので2回目。曾根崎心中という演目は、歌舞伎も含めて何度も観ている事に成る。言わずもがな近松門左衛門の世話物の傑作。

初演と違い、かなりリニューアルされている。冒頭の「観音廻り」はバックに映像が流れるのだが、前回は写真だった物が、現代芸術家の「束芋」によるアニメーションに変わっていた。

「束芋」のアニメーションはおどろおどろしいものなので、真っ暗な会場の中、一人ふらふら歩く「お初」の姿が幽玄の世界の様。

最後、初演では本物の十一面観音立像が出てきたけど、流石に海外公演で持ち歩く訳にもいかなかったらしく(笑)映像になっていた。

この冒頭の「お初」。三人遣いではなく、一人遣いなんだよね。なんでも、桐竹勘十郎が頭からそれ専用に作ったものらしい。

そしてオープニングからしてインパクトがある。真っ暗な劇場の中、人間国宝の鶴澤清治が中央で一人三味線を鳴らす。それが終わると暗転して、「観音廻り」の場面へ。

主遣いも黒子で真っ暗な舞台上。そして最低限のセット。

舞台も観客席も真っ暗で、スポット的にライトが当たって演じられる。セットも最低限。

余分な情報を徹底的に排除されている感じで、物語や人形の動きに集中できる。あとやっぱり、字幕は無い方がいいね。
横とか下とか上とかに字幕が出てると目に入るんだもん。

ただKAAT神奈川芸術劇場の様に奥行きがなかったから、最初の「観音廻り」は割とすんなり出てきた感じ。KAAT神奈川芸術劇場では、人形が遠くから歩いてくる様で、距離感に錯覚が出来て不安になったんだけどね。

それと、今回は原文に忠実に演じられてるらしく、えぐい部分はえぐい。特に最後の心中シーン。

醤油屋の手代「徳兵衛」は人を刺した事なんて無い訳で、何度も「お初」を刺す。やっとの事で息絶えた「お初」の後に自分はカミソリで首を切る訳だがやっぱりうまくいかない。何度も何度も切った後にやっとこと切れる……

もー観ているだけで痛そうなんですが。

人形だからこそできる表現が有ると思う

文楽に今まで興味がなかった人も是非観てもらいたい作品。芸術性は高いし、何より文楽の素晴らしさというのが、シンプルな演出により、よくわかる。

人では出来ない事や、人でやると生々しくて逆に変に思えてしまう事等が、文楽ではすんなりと表現できる、そこが文楽の強みだと思うんだよね。

歌舞伎や演劇の心中物はやっぱりちょっと生々しいんだよなー。なんというかちょっと下世話というか。オペラの「オテロ」とか観たけど、芸術性が高くても、やってる事は不倫とか嫉妬とかだったりしてちょっと滑稽だったりするんだよね(笑)

そうゆうものを人形はスポイルしてくれる。まー美しすぎるから、「曾根崎心中」公演当時は心中が流行ってしまったのかもしれないけど。

過去記事:5月文楽公演(国立劇場)を観てきました

過去記事:近松の名作、曽根崎心中のあらすじ[文楽]

関連として。三谷幸喜が書いた、「曾根崎心中」のその後日談。コメディーだけどね(笑)
過去記事:其礼成心中を観た

あらすじ

という訳であらすじをコミック工房で描いてみた(笑)

杉本文楽「曾根崎心中」

杉本文楽『曾根崎心中』

2014年3月20-23日

世田谷パブリックシアター

杉本文楽 曾根崎心中

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