江戸の息づかいを感じられる繊細なアニメーション
テアトル新宿で百日紅 ~Miss HOKUSAI~を観てきた。面白かった。
公式サイト:映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』公式サイト
日曜の昼なので、満席に近かった。お客さんは年配の方とかも多かったな。
カラフルな特製アイスティー
江戸の町並みとかがとても丁寧に描かれていて、風景や人の生業が美しく、それを観ているだけでも楽しい映画。
それにしてもよく動く。細かな所とかでちょこちょこ動いていたりして、なんとも活気のある町の風景なんだよね。そして、四季の変化も美しくて、これだけ観てたら江戸に住みたくなるよねえ。
天才北斎とその娘
北斎とその娘、という関係性の特殊さがよく出ていたなあ。親子でありながら師弟。
しかも、親は天才。同じ道を歩む身としては、どうしてもその辺迷いとかが出てしまう。
親子関係での葛藤とかは先日、中村勘九郎がナビゲーターになった番組で、色々な人が語っていたけど、先代がすごいと子供はやっぱり大変だよね。
北斎の娘、お栄もそんな悩みを抱えていて、何でも描ける事を自負しているんだけど、それでもやっぱり北斎のスケールダウンでしかなくなってしまうんだよね。
物語で、「そろそろ自分の絵を描きなさい」と言われて、結論として妹の絵を描くのだが、その絵は仕事としての結論ではない気もする。
仕事の絵と趣味の絵の違いはそうゆうところなんだろうなあ。
まあそれでも、注文が来るならいいんだけどさ。自負という面では色々と葛藤が出てくる訳だよね。
対象的には善次郎というキャラがいて、彼は北斎の弟子で、後に春画で大成するのだが、技術的にはお栄に全然及ばない。ただ、春画としてはお栄よりも売れる。善次郎は遊び人だから、経験値の差と言うものがあるからってのもあるんだけど、お栄はそれが納得できない。
自分に不得手があるのが許せない。99個で勝っても、1個負けたら負けのような考え方をしちゃうんだよね。父が偉大過ぎるからなんだろうけど。
真面目過ぎる性格の災いでもあるし、ふっと気が抜けた時にその葛藤から抜け出せるんだろうけど、物語的にはそこまで話が及ばないところで終わっちゃう。その辺はちょっと消化不良かなー。
ストーリー自体はやや寄せ集め感はあったり
原作は未読でこれから読むんだけど、エピソード的には、ちょっと寄せ集め感はあるんだよね。ぷつりぷつりと関わりの無いエピソードをお栄、北斎、善次郎で追いかける形で話が進む。季節が変わると違うエピソード
でという形で、淡々と進んでいく。
そんなわけで終わりは割と唐突なんだよね。まあ、あの感じだといつまででも続けられる話なんだけどね。
間を使った日本映画のようなアニメ
派手な演出はあるものの、映画の雰囲気は日本映画って感じで、日常的な風景でのやりとりは、小津安二郎の映画みたい。
日本映画の真髄って間にあると思うので、
個人的にはこういったまったりとした間の映画は好きなんだけどね。
映画館でも楽しかったけど、お酒を飲みながらゆっくり観たくもある。Blu-rayでたら欲しいなー。
ただ、声優が俳優さんだから、アニメでなくても……とか、ちょっと思ってしまった。
あえて白黒映画の実写とかでも良さそうな雰囲気もあったり。
あー、でもそれだと絵画的なカラフルさを出すのは厳しいかー。浮世絵的な色彩美が楽しい映画だしなー。
やっぱりアニメが良いのかなあ(笑)こうゆうアニメもやれるのが、日本のアニメの懐深さだからねー。
蛇足な話で……これは個人的な見解で、あくまで偏屈な意見なんだけど、サブカル的で、強い女性が主人公の物語のテーマソングで、椎名林檎を使うのはなんとも…ね(笑)
なんか様式美みたいになっちゃってる気もしないでもない。
椎名林檎が他に類のないアーティストだから仕方ないのかもしれないけど、テーマソングで椎名林檎が使われてる時点で、見なくても空気感が分かっちゃうんだよなあ(笑)
パンフレット買いました