独特な衣装と舞台構成の和風な雰囲気なマクベス
世田谷パブリックシアターで開催された野村萬斎主演のマクベスを観てきた。公演時間は1時間半と短め。
公式サイト:世田谷パブリックシアター:マクベス
以前、堤真一主演でも観たマクベス。
今回は演者が5人、それ以外は三味線、太鼓、尺八という構成。
特に魔女役の3人のおっさん(笑)の役者さんは天井棧敷とかの方らしく動きが独特なんだよねえ。そしてこの3人が舞台で衣装を着替えたりして、コロコロと役を変えていく。魔女かと思ったら次のシーンではダンカン王になったりバンクォーになったりと目まぐるしい。
なので、ちょっと気をぬくと誰だったか分からなくなっちゃったりする(笑)
マクベスの舞台として1時間半と短いので、ストーリーは所々端折られてたり、ステージの構成がシンプルだったり、舞台装置が最小限だったりと、狂言っぽい雰囲気がやっぱりあった。
野村萬斎のマクベスは、強い男であるが実直で臆病者。その臆病さゆえにダンカン王を暗殺することを拒むのだが、妻にそそのかされて暗殺してしまう。
その後、権力の座についても、安心できず疑心暗鬼になりだんだんと壊れていく姿が鬼気迫っている。
マクベスの妻を演じた鈴木砂羽は悪女という雰囲気を醸し出していて、マクベスよりもずっと大胆で勇敢。しかし、マクベスの影響を受けて、やはりだんだんと壊れていくんだよね。
そして、魔女の3人。この3人の役柄がコロコロと変わることが、まるでマクベスの心象表現を映し出しているようで、運命に翻弄されるマクベスを表しているような感じだった。
マクベスが独白しているシーンでも、舞台の後ろから3人が覗いていたり、端っこに座っていたり……
結局マクベスは、運命の魔女からいつも見られ、踊らされ、殺されるという印象が残った。
そして最後、イングランド軍の加勢を受けたマクダフが森の中からやってくる。
その森は巨大な大きな幕で表現されていて、最後マクベスはその幕に覆われて飲み込まれてしまう。
床に敷かれた幕にマクベスの死体だけが形として出ていて、そこから花が咲いてくるというなんとも印象的なラスト。
うーん、なんともインパクトのある終わり方だよなあ。
俯瞰のマクベス
3人の魔女に翻弄されるマクベスという感じで、観ている側は俯瞰で見ているような感覚だった。
マクベスに共感し、感情に訴えかけるというよりも、3人の魔女とそれに翻弄されるマクベスを上から眺めているような感覚。
舞台に入り込むというよりも、神様になったような視点で観るマクベス。なんとも面白く不思議な感覚だったよ。