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タモリが発見した話を鶴瓶が落語化!それを勘九郎が歌舞伎化した「廓噺山名屋浦里」[歌舞伎・感想]

廓噺山名屋浦里

新作歌舞伎でありながら古典のような味わい。名作になりそうな人情噺

八月納涼歌舞伎・夜の部で公演された廓噺山名屋浦里(さとのうわさやまなやうらさと)の感想。

ずいぶん時間が経っちゃったけど(笑)

タモリブラタモリで見つけたエピソードを笑福亭鶴瓶が落語化したものを歌舞伎化したもの。

とてもよくできた人情噺で、その味わいは古典落語のよう。

ここ最近の新作歌舞伎の中では一番歌舞伎っぽい感じがするなあ。

新作歌舞伎ってみょーに現代風の演出が入ったりすることが多かったり、見得すら切らないので、歌舞伎か現代劇か分からないようなものがあるけど、この歌舞伎は定番化してもいい感じ。

空気の読めない堅物の主人公の宗十郎勘九郎)と実はちょっとした裏事情があるヒロインの花魁・浦里七之助)はなかなかのハマリ役。

特に浦里が本当にいい。

普段は凛とした美しさがあるのだが、その実野暮ったいところがあって、その野暮ったさがとても可愛らく演じられていたんだよねえ。

いわゆるギャップ萌えってやつ?(笑)

それと山名屋の奉公人、友蔵駿河太郎)。

ひとり現代劇の人なので、間の取り方が現代劇なのだが、やっぱり関西弁に違和感がないので、堅物の宗十郎との対比がいい。

それと山名屋の主人、平衛門扇雀)。

苦労人店主感が出ていて、仕事に忠実でありながら、人情味がある雰囲気がいい。

店主の平衛門しかり、山名屋の面々もまた地方出身者で、宗十郎の気持ちが分かってしまうんだよねえ。

だから、普通に考えると無理な宗十郎の提案を受け入れてしまったわけで。

同郷愛憐れむ(同郷じゃないけど)じゃないけど、都会で頑張ってる地方出身者はこの歌舞伎を観たら頑張ろうって気になるかもしれない。

Satonouwasa

あらすじ

主人公の酒井宗十郎(勘九郎)は江戸留守居役。職務に忠実でお堅い役人。ある意味空気の読めないかたぶつの堅物という感じの人物。

ある日花火見物のために、各藩の江戸留守居役が集まる会合に呼ばれる。

秋山源右衛門(彌十郎)を筆頭にしたその会合というのも名目で、要は各藩の藩の金をつかって遊んでいるだけ。

なんかどっかの県議員みたいな話だよねえ(笑)

そんな中にお堅い宗十郎が呼ばれたわけだが、真面目な宗十郎ははやはり浮いてしまう。

宗十郎は飲み食いするより各藩の談義をしたいと提案するのだが、そんな提案はやっぱり却下されるわけで。

すっかり興が削がれた秋山たちは、宗十郎をからかうためにある提案をする。

それは江戸の妻をお互い紹介し合おうというもの。

江戸の妻とはすなわち、馴染みの花魁を見せ合うということで、堅物の宗十郎にはそんな相手がいるはずもない。

そんなことは百も承知な秋山たちの挑発にのって、宗十郎は次の宴席には同伴してくると確約してしまう。

宴席にひとり取り残された宗十郎の近くに屋形船が流れてくる。

扇を流してしまった禿の扇を拾ってやろうとのぞいた舟の中には、江戸一と噂の高い花魁、浦里。

彼女の姿を見た宗十郎はある決心をする。

その決心とは次の宴席には浦里を同伴しようというもの。

数日後、宗十郎は浦里のいる山名屋へ。

一見の宗十郎が花魁ナンバーワンの浦里に会えるはずがない。それでも、必死に懇願する宗十郎に根負けして店主の平衛門(扇雀)は、自分の居間に通す。

部屋に通された宗十郎はこれまでの経緯を平衛門に話す。

宗十郎の誠実さと必死さに心を動かされるものの、遊女屋の主人としての心得を語って、正規の手段で花魁を誘いってくれと断る。

そこにその話を聞いていた、花魁を・浦里が現れ、その話に乗ってあげると言い出す。

会合の当日、各々自分の馴染みの花魁を連れて待っている秋山たち。

そこに現れた宗十郎。やはり宗十郎に江戸の妻などはいないと、あざ笑う秋山たちであったが遅れてやってきた、宗十郎の妻とは名乗る花魁の姿を見てびっくり。

そこには江戸のナンバーワンの噂に高い、浦里が立っていた。

浦里に勝てる花魁などは居るはずもなく、平謝りの秋山たち。

以後、宗十郎に接する態度もすっかり変わってしまう。

その一件の例を言いに山名屋へ現れた宗十郎。

金を浦里に渡そうとしたのだが、浦里は受け取らない。そこには受け取りたくない事情があったのだった。

八月納涼歌舞伎・夜の部

2016年8月 一、土蜘

ニ、廓噺山名屋浦里

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