国立劇場開場50周年記念・近松名作集、第一部は俊寛で有名な平家女護島
国立劇場で文楽、第一部を観てきた。
今回はレクチャー付きで近松と平家女護島のレクチャーを受けてからの鑑賞。
予備知識を入れてからの鑑賞もまた楽しいね。
で、平家女護島。正確な読み方が分からないらしくへいけにょうごしまと呼ばれたり、にょごしまと呼ばれたりと色々。
有名なのは俊寛の場面、鬼界が島の段で、歌舞伎でも文楽でもここだけ演じられることが多い。
というか、元々能の俊寛を近松門左衛門がアレンジしたもので、本来はそこしかなかったわけだからね。
しかし、近松門左衛門、大胆なアレンジをしたもんだよねえ。
俊寛だけを見ると、島に取り残される俊寛の哀れさを表しているのだが、前後の話を見るとまったく違う。
どちらかというと、平清盛を中心に、巻き込まれた人たちが色々と引き起こす悲劇的な長編物語。
最終的には幽霊が清盛を呪い殺しちゃうという奇譚話なんだよねえ。
その中での重要人物は俊寛が島に残る原因となる千鳥という海女で、本来の俊寛ではいない彼女が実は重要なキーマンになっている。
元々の話である俊寛は、その物語となるキーでしかなく、俊寛の事件を元に清盛とそれを倒そうとする俊寛の従者、有王丸と千鳥の話になっているんだよねえ。
あの俊寛の話から、こんな大衆向けの冒険奇譚にしちゃうなんて近松門左衛門ってやっぱすげえ。
大衆が喜びそうなことを知ってるんだよなあ、本当に。ただ、今それを見ちゃうと俊寛の哀れさとか趣が台無しなんだけどね(笑)
千鳥って文楽や歌舞伎だと、色白の娘で華やかな着物だけど、海女だから実際はもっと色黒でおしゃれな着物じゃないよねえ(笑)
各段のあらすじ
今回公開された3段の簡単なあらすじ。
六波羅の段
平清盛が俊寛の妻、あづまやを口説くのだが、操を立てるあづまやは自害。
清盛の甥、教経はその行為をあっぱれとし、あづまやの首を切り落とし、清盛の前に差し出す。
清盛ドン引き(笑)
興が削がれた清盛は立ち去るが、そこに俊寛の従者、有王丸が六波羅に現れて、あづまやの自殺を知り大暴れ。
ここで暴れてもしょうがないよと教経に諭され、立ち去る有王丸。何しに来たんだ(笑)
鬼界が島の段
謀反を企て絶海の孤島鬼界が島(今の鹿児島、硫黄島)に流された俊寛たち首謀者。
壮絶な生活に嫌気がさしていた、俊寛たちだが、そこに救済の船が来る。
懐妊した清盛の娘の大赦により、罪が赦されたのだ。
本来は成経、康頼だけが赦免で俊寛は置いてかれるところだったが、清盛の息子重盛の計らいでなんとか俊寛も救われることに。
喜びいさんで船に乗ろうとしたら、4人はダメだ3人だけと言われる。
実は成経には現地妻、海女の千鳥がいるのだが、一緒に乗船しようとしたところを使者の瀬尾太郎に止められたのだった。
4人はダメだと融通の利かない瀬尾。
どうにかならない?と食い下がる俊寛に、妻のあづまやが自害したと告げる瀬尾。
絶望した俊寛は、3人じゃなきゃだめなら俺が残るというのだが、やっぱり融通の利かない瀬尾。
決心をした俊寛は瀬尾を殺し、その罪で島に残るという。
俊寛を残し、立ち去る船。かっこつけたものの、やっぱり未練のある俊寛は、島の絶壁で船を見送るのだった。
本来の能では千鳥は出てこないので、ただ単に清盛の腹いせで残される俊寛だが、近松のアレンジで千鳥のために残ることに。
この千鳥が次の段でのキーマンになるんだよね。
船路の道行より敷名の浦の段
赦免の船が敷名の浦に着く。
俊寛が帰ってくるのを待っていた有王丸は俊寛がいないことを嘆き、自害しようとしたところを千鳥に止められる。
そこに清盛の船が現れる。清盛は後白河法皇とともに厳島へ参拝に向かっていたのだった。
途中、清盛は後白河法皇を暗殺するために船から投げ捨てる!
溺れそうな後白河法皇を助ける海女の千鳥。後白河法皇は助かったのだが、それに怒った清盛が千鳥を熊手で清盛の船に引き上げ、散々嬲った後に頭を踏み潰す。
グロい!グロすぎる清盛!!
すると、千鳥の体から魂が抜け出し、清盛の頭に取り付く。恐ろしくなった清盛は後白河法皇を追わずに都へ逃げ帰るのだった。
結局この千鳥の呪いとあづまやの呪いで高熱を出して清盛って死んじゃうんだよね。その辺は実話とリンクさせてるわけだよねえ、近松。
国立劇場開場50周年記念・近松名作集
2017年2月・国立劇場
<第一部>
平家女護島(へいけにょごのしま)
六波羅の段
鬼界が島の段
舟路の道行より敷名の浦の段