メニュー 閉じる

尾上菊五郎の通し狂言「三千両初春駒曳」を観た[歌舞伎・感想]

150年ぶりの再演!小田(織田)信長の後継者争いを元にした、テンポのいい話の展開とド派手な演出が面白い、スケールの大きな話

1月、国立劇場で尾上菊五郎通し狂言「三千両初春駒曳」を観た。出演は尾上菊五郎菊之助親子、尾上松緑中村時蔵

初演は大阪で150年前に公演されたものを、国立劇場の文芸研究会が大幅に手直しし、菊五郎が監修したもの。

元々は江戸時代の話で、老中、本多正純による将軍暗殺計画や、里見浩太朗主演で有名な時代劇「長七郎江戸日記」の主人公、三代目将軍徳川家光の甥、松平長七郎の伝記等を脚色したものだったが、今回は時代を織田信長の時勢『本能寺の変』後に変更され、織田家の跡目争いの話になっている。織田信長じゃなくて「小田信長」と変名されてるんだけどね。

主役は菊五郎の「小田三七郎信孝」。時代劇の長七郎の様に風流人で、政治に興味が無く最後には市井にまぎれて生きていく事に。ただまあ、本能寺の変で死んだ信長とその息子「信忠」の弟ということで、「柴田勝重(勝家)」に推挙される。
もう一人の跡目は信忠の子供、「三法師丸」。幼い三法師丸のバックには真柴久吉(秀吉)が付いている(秀吉ね)。
どちらかというと、いい方が秀吉で悪い方が勝家という構図になって話は進む。

尾上松緑演じる「柴田勝重」が悪いやつで、三七郎信孝を跡取りにする為に、悪事を働く。その発端となったのが、高麗国でのやりとり。

あらすじ

高麗国に日本の漁師「綱蔵」(亀三郎)と「網作」(松也)が流れ着くのだが、そこで高麗国のお姫様、「照菊皇女」(菊之助)に網作が一目惚れされる。
「綱蔵」と「網作」は実は日本のスパイで、「小田信長」が死んだ混乱期に高麗国が攻めてこないかどうかを探る為にやってきた。
「照菊皇女」と「網作」がちちくりあってる間に、「綱蔵」は探りを入れてくる。

高麗国は攻める気満々だから、それを早く日本に伝えてくれと、先に「網作」を帰す。実はこれは嘘であった

「綱蔵」は柴田派の部下で、「網作」は真柴派の部下。嘘の情報を教えて、真柴派の信用を落とす作戦だった。案の定、信用を失った「網作」、本名「小早川采女」だったが、叔父の「小早川帯刀」の配慮で、謹慎の処分で済んだのだった。

その頃、「網作」の事が忘れられない「照菊皇女」は海を越え、日本に向かうのだった。なんて行動力のある姫(笑)

日本に来た「照菊皇女」は「おきく」となり、「網作」と再開する。丁度その時、「小早川帯刀」は、風流を愛する「信孝」に宴席に招かれていた。

小田家の家宝、「蛙丸の剣」を、「信孝」が持っているのではないかと疑っている、「小早川帯刀」は「おきく」に傾城のフリをさせ、屋敷に連れて行く。

酔って寝てしまった「信孝」の刀を奪おうとした時、「信孝」は目を覚ました。そして本心を「小早川帯刀」に打ち明ける。

自分は世継ぎをするつもりは無く、野に下ると。

 

……って、「小早川帯刀」って酷くね!?自分の甥に惚れてる女子を、要はキャバ嬢にして自分の敵の部屋に行かせちゃうんだよ?

「信孝」が下衆じゃなかったから良かったものの、変態だったらやられちゃってるわけですよ!

自由奔放な「信孝」とド派手な釣り天井、そして小田家の家宝、「蛙丸の剣」の行方と同時自害!

「信孝」が出奔してしまったため、「柴田勝重」は追いつめられ、「三法師丸」暗殺用に設置した釣り天井!を作動させ自害。ま、生きてるんだけど(笑)

「信長」の一周忌法要の為に用意した三千両を積んだ馬が、石川五右衛門の手下に奪われそうな時に「信孝」が現れて派手な立ち回り。そしてその金を「信長」の為に使う金なんだから息子が貰ってもいいだろ?とか勝手な理屈持って行ってしまう「信孝」(笑)

金は「信孝」が郭で使ってしまった補填にするらしい(笑)ひどい……ま、その辺ドラマがあるのだが。

「信孝」 が世話になっている材木問屋の「田郎助」と甥の「与四郎」は、実は「田郎助」と「柴田勝重」は兄弟で、「与四郎」は「柴田勝重」の息子!!

謀反人「柴田勝重」に関係なければ、息子の「与四郎」を討てといわれ、義理と忠義に板挟みとなった「田郎助」は自害してしまう。しかし、同時に2階で「与四郎」も自害。

雨どいを伝って流れる2階の「与四郎」の血と「田郎助」の血が合わさって池に流れた時に、池に隠されていた「蛙丸の剣」が出現!なんてドラマチック!!

 

入り組んだストーリーと派手な仕掛けが面白い!ただ、ちょっと敵役に不満が……

メリハリもあるし話のテンポがよく、仕掛けも色々あって面白かった。菊五郎の「信孝」はなかなかのハマり役。ただちょっと気になったのは敵役の「柴田勝重」が……ちょっと悪そうに見えない。

敵役は憎らしいぐらいが丁度良いんだけど、松緑の「柴田勝重」は強そうなんだが、釣り天井とか罠にはめる様なずるさがにじみ出てないだよなー。逆に「田郎助」はいい感じなんだけど……(田郎助も松緑)

こいつムカつくわーー!ってくらいの嫌らしさが是非欲しいよなー。 

三千両初春駒曳

初春歌舞伎公演・通し狂言「三千両初春駒曳」2014年1月国立劇場

序 幕   高麗国浜辺の場
二幕目   第一場 御室仁和寺境内の場   
        第二場 同    御殿の場
三幕目   第一場 今出川柴田勝重旅館の場
        第二場 粟田口塩谷藤右衛門内の場                 
        第三場 元の柴田旅館釣天井の場                  
四幕目   住吉大和橋馬切りの場
五幕目   阿波座田郎助内の場
大  詰   紫野大徳寺の場

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です