今年も第一部、第二部と通しで観てきた五流五番を楽しめる能の総合フェスティバル「式能」
今年も国立能楽堂で開催された、第56回式能を鑑賞してきた。
式能は古来の能楽の流れ神・男・女・狂・鬼の順番に公演をする会で、能の五流派(観世、宝生、金剛、喜多、金春)と狂言二派(大藏、和泉)をいっぺんに観られる会。
ただ、古流の流れで観るには第一部、第二部と通しで観なければならない。大変である。9時間である(笑)
第一部
翁(金剛流)
五穀豊穣を祝う、能にして能に非ずの特殊な祝いの舞。今年の三番叟は野村万蔵だった。翁って能なんだろうけど、翁役の能楽師より三番叟踊る狂言師のが目立つよねえ。
竹生島(金剛流)
竹生島に参詣する船に乗ったら、同乗した女性と老人は弁天様と龍神でしたという話。
途中、女性は舞台上の岩の作り物に入り、老人は退場する。
弁天の衣装が大掛かりで、なかなか出てこないんだよねえ。脇正面で見ていたから、衣装を整えてる人の顔がちょっと困っているのが見えた(笑)
謡の人たちの着物が波の柄でなんかおしゃれ。
福の神(和泉流)
二人の男が参詣しているとそこに福の神が現れる。
福を授けてくれという二人にお供え物を請求する福の神。お金?と問いただすとそうでなく慈悲深い心を持ってあがめよとのこと。
なんだけど、退場するときに結局は酒とかお供え物をたっぷりよこせと請求する福の神(笑)どっちなんだよ!
橋弁慶(観世流)
五条の大橋に夜な夜な現れる謎の子供。そこに現れる巨漢の僧兵・武蔵坊弁慶。
人を襲う子供の正体は牛若丸であった。
大立ち回りのある能でなかなか派手な能。牛若丸に怯える間狂言がかなり面白いよ。
二人袴(大藏流)
婿入りすることになった舅に挨拶に行く、父親と息子。
さらっと息子だけ挨拶して帰ろうと思っていたのだが、父親も来てるなら挨拶してくださいと言われる。
さらっと息子だけ挨拶して帰ろうと思っていたので、正装の袴が一つしかない。
仕方がないので、交互に履いて一人ずつ挨拶をしていたのだが、二人いっぺんに飲もうという話になり……
袴が一枚しかないので、その袴を割いて2枚にする!そして、前だけ(エプロンみたいに)当ててお尻を見せないように舅の前に現れるのだが……
事情を知らない舅がいろいろと無理難題を突きつけるんだよね、踊れとか(笑)完全なドタバタコントですよ、ほんと。会場中爆笑でした。
なんども観てるけどやっぱり面白い。今年の大藏流はキレッキレだったなあ。襲名とかあったからかな。
第二部
西行桜(金春流)
隠遁する西行の桜は、今年も満開。
それを見た花見客が中に入ってみたいという。最初は渋った西行だったが仕方なく中に入れると、花見客に家がボロいと文句を言われる(笑)
花見客が帰った後、お前のせいで文句を言われたわっ!という愚痴の和歌を詠んだら、桜の精が出てきて、そりゃ言いがかりだわーと愚痴を言う。
なんだろ、結局愚痴の話(笑)
柑子(和泉流)
柑子(こうじ)と読む。要は蜜柑のこと。
前日の飲み会で立派に三つなった蜜柑をもらったことを思い出した主人は預けた太郎冠者に出せと言ったら、結局は全部食べてしまったという話。
三つめを食べた言い訳が面白くて、歌舞伎でも有名な俊寛を引用して適当なことを言う太郎冠者。
二つ食べて、残った一つの蜜柑が、島に取り残された俊寛のように哀れだから、六波羅に入れた。つまり腹の中に入れた……って!
ほんと、適当(笑)
定番の「やるまいぞ」オチかと思ったら、しれっと終わる謎のオチ。
籠太鼓(宝生流)
殺人の罪で捕えた罪人が逃げてしまったので、その嫁を捕まえて牢屋に入れて、罪人の居場所を吐かせようとした。が、女は居場所を知らないと言う。
あまりに嘆くので、領主は女房を釈放するのだが、この牢屋こそが夫の形見だと言い張り、牢屋に付いた時を区切るための太鼓を狂ったように叩き出す。
その姿にちょっとひいた(笑)領主は夫の罪も許すよと言うと、実は夫の居場所を知ってたのよ、てへぺろっ!と言い放ち、夫の元に旅立つ。
知能犯的なメンヘラの話(笑)
柿山伏(大藏竜)
15分と短いが、コントの要素がすべて詰まった、面白い狂言。これと棒縛は本当によくできた話だよねえ。
修行中の山伏は喉が渇いたので、たわわになっている柿を盗むために木に登る。
そこにその柿の持ち主の農民が現れて……
山伏だとわかっているのに、山伏を懲らしめるために面白がってそこにいるのは犬だの猿だの鳶だのと鳴き真似をさせる。
最後の鳶で、飛ばないとおかしいだろう?と農民に言われて飛んでしまった山伏は、木から落下し腰を痛める。
お前のせいで、腰を痛めたからおぶって行けと言う山伏を置いて帰ろうとする農民を、山伏の法力で引き戻す。生臭坊主なのに法力がちゃんとある(笑)
仕方がないので、背負うふりをする農民だが、結局投げ飛ばして逃げるよいう……(笑)定番のやるまいぞオチ。
殺生石(喜多流)
奈須野に飛んでいる鳥が落ちるという岩がある。
そこを通りかかった僧の前に現れた不思議な女。女はその岩の由来を語りだす。
女の正体は岩の中に封じられていたのは玉藻と言われる妖狐。
一度消えて岩の中に入り、中入りの後に岩がパッカーンと割れて中から妖狐となった玉藻が出てくる。
もう悪さはしないと言って、立ち去る妖狐。
岩がパッカーンと割れるのが、能の舞台としては派手。ちょっとびっくりした(笑)
そして感想
いやー、長かった。でも、今年の式能は結構派手な演目があって、α波出しまくり(睡眠)ということはあんまり無かったような。まあ、ご飯後の西行桜が、あんまりメリハリなくて辛かったけど(笑)