口上人形の口上から塩治屋敷閉門まで。大星由良之助の復讐劇のはじまり
国立劇場で上演している通し狂言 仮名手本忠臣蔵の第一部を観てきた。
今月から年末まで3ヶ月続いての上演。しかも、文楽まで(笑)
国立劇場50周年とのことで、グッズなどが花盛り。
忠臣蔵なんてもう何回も観てるんだけど、今回は完全上演ということで、現存し上演できる物は全て上演するそう。
まあ、二度と観られない段もありそうなので、これは観ておかないとねえ。
今回は足利直義が新田義貞の兜を奉納するところから、塩治判官切腹の後、屋敷の閉門まで。
上演の前に口上人形が幕の前に出てきて、出演者の名前を読み上げる口上付き。エヘン。
今回、幸四郎の大星は最後のちょい出。
塩治判官の梅玉と高師直の左團次がよかった。
特に左團次の高師直。これがむかつくんだよねえ(笑)
散々上から目線だったのに、加古川本蔵から袖の下をもらった後の卑屈な謝りっぷりたらもう(笑)
それと有名な松の廊下の場面。
あんなにネチネチ言われたら、そりゃキレるわ(笑)
ガクッと膝から落ちた塩治判官に膝枕状態で下からのぞき込んで嫌味言うとか(笑)
「ふ・な・ざ・む・ら・いがっ!」
とか言われたらキレるわっ(笑)
こんな上司は絶対嫌だけど、部下が部下だしねえ(笑)
部下はチャリ場というお笑い担当だし(笑)
塩治判官切腹の場は50分間入退場制限あり。
シーンと静まりかえった劇場内でしずしずと切腹が行われる場面。
「大星はまだが」
の塩治判官の台詞だけが響き渡るのが物悲しい。
切腹の作法を最初から最後まで観られるのってなかなかないので、これを観るだけでも価値があるよねえ。
日本人は今も昔も大手の中小いじめから始まる反撃が大好き
近年半沢直樹がヒットしたりとか一連のサラリーマン反撃ものって昔から日本人は大好きなんだよねえ。
序盤のいじめがむごいほど、後半の反撃がスカッとする訳だが。
忠臣蔵エピソード1は、大手ゼネコンが発注案件で中小に難癖つけて、つぶしちゃう話だもんね(笑)
もー、大手の高師直はやりたい放題ですよ。
桃井若狭之助が兜奉納に関する意見を言ったことから、高師直のいじめがはじまったり塩治判官の奥さんに手を出そうとしたり。
しかも、塩治判官をいじめはじめる原因って、奥さんにふられたからだしねえ。
やりたい放題かよっ!高師直!
サラリーマン必見!中小企業の管理職としては正しい判断な加古川本蔵
実は最初のいじめのターゲット高師直に異議を唱えた、桃井若狭之助なんだよね。
塩治判官はどちらかというと桃井をかばう役だったのだが、桃井の部下、加古川本蔵の機転のおかげで、ターゲットが変わる。
最後、切腹の場で塩治判官に恨み言を言われちゃう加古川本蔵なんだけど、中小企業の部長としての判断は正しいんだよなあ。
殴り込みに行くっ!と言っている社長の桃井を止めるどころか、その気概を褒めて、はやし立てて、その裏自分は早馬で高師直のところに行き、袖の下を渡して、逆に桃井に対しての非礼を詫びさせるなんて、すべてを丸く収める処世術にたけてる!わけですよ。
上司の機嫌をとりつつ、取引先にそれを飲ませて円滑に進めるなんて中間管理職の鏡。
そう考えると大星は甘いよね。
いくら遠隔地にいるとはいえ、大事な会議に新人で女に弱い早野勘平なんて付けちゃうんだもん(笑)
そんなわけで、これから壮大な大星の倍返しがはじまる訳ですよ。
切腹後は切腹最中を食べて一服(笑)
切腹を見守る、大星な黒子ちゃん(笑)
中にもちが入っていて美味いのだ(笑)
国立劇場開場50周年記念
平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
【第一部】 四幕九場
大 序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目 桃井館力弥使者の場
同 松切りの場
三段目 足利館門前の場
同 松の間刃傷の場
同 裏門の場
四段目 扇ヶ谷塩冶館花献上の場
同 判官切腹の場
同 表門城明渡しの場