「今日、世界が死んだ。もしかすると昨日かもしれない」からはじまる、人類への警告ともとれるインスタレーション
リニューアルオープンした恵比寿の東京都写真美術館で開催された杉本博司 ロスト・ヒューマンを観てきた。
前日に、杉本博司と野村萬斎の三番叟を観て、さらにこれを観にきてるという濃厚さ(笑)
該当記事:野村萬斎×杉本博司 ディヴァイン・ダンス 三番叟 ~神秘域(かみひそみいき) at オーチャードホール[狂言・鑑賞]
個人的には徹底的に不必要なものを排除していく手法は好きなんだよねえ。
でも、今回の展示は、どちらかというとエゴ丸出しのてんこ盛りな感じだった。
ビジュアル的なものはシンプルなのかもしれないけど、思想的な面でね。
2階、3階で展示され、3階は「今日世界が死んだ。もしかすると昨日かもしれない」というテーマで、33の文章とそれに関係する展示。
2階は「廃墟劇場」「仏の海」という、写真を中心とした展示。
メインテーマでもある3階の展示は、「今日世界が死んだ。もしかすると昨日かもしれない。」から始める33の詩文。
その背景に杉本博司の写真や収集物が無機質に並べられている。
詩文は杉本博司が書いたものだが、それを代筆しているのが、各界の著名人たち。
例えば、コンテンポラリーアーティストの詩文はロバート・キャンベル、ロボット工学者は文楽の竹本咲甫太夫。そのほかにも千宗屋や磯崎新、加藤浩次など、様々なジャンルの著名人が代筆をしている。
かなりテーマ性の強い展示なので、杉本博司の写真を期待して観にいくとかなり面を食らうことになる。
その思想も現代文明が拡張して死滅してしまうというものばかりなので、そういった退廃的なものの見方などが苦手なひとはちょっと参るかもしれない。
なんというか……展示というよりも、一種のテーマパークのよう。
廃墟であり、戦時下であり、文明が死滅してしまった後のようであり……
ある意味、杉本博司の趣味全開でもあったりするので、割とお腹いっぱいになってしまうような部分はあるよねえ。
2階の展示は写真を中心としたものなので、そちらの方が気持ちはざわざわしないかも?
そうは言っても、暗い展示室の中で白黒の廃墟の写真を観ているわけだから、館内をでた頃にはぐったりしてしまったよ(笑)
インスタレーション系のアート作品は作者の臓腑を見せられているようでもあり、精神的にぐっとくるものがある。
芸術というものはやはり、裸よりも気持ちの悪いものを見せる作業であるわけだよねえ。
恵比寿ということで、観終わったあとは、ビールに逃避しました(笑)